贈与税「110万円なら良いでしょ?」がなくなる日!?
相続税の節税対策としては、「毎年110万円以下の贈与を行う」(いわゆる生前贈与)が広く行われています。ところが、この生前贈与が富裕層の過度の節税対策に利用されているとして見直しの対象になっています。
令和2年末の自民・公明両党が発表した「税制改正大綱」では、相続税と贈与税をより一体的に捉えて課税することを検討することとしています。つまり、相続税と贈与税を一体化することで、贈与税を実質的に廃止し、「生前の贈与によるか」「死亡による相続によるか」で税金に差が出ることのないようにしようとしているのです。まだ、検討段階なので、何も決まっていませんが、将来的には生前贈与という節税策が使えなくなることが想定されます。
そもそも「なぜ、110万円?」
相続税の節税対策として、生前に財産を贈与することにより相続財産を減らしておくという方法があります。では、なぜ贈与金額を110万円以下とするのでしょうか?
個人が財産を贈与された場合には贈与税がかかります。しかし、その年の1年間に贈与された金額の合計額が基礎控除額の110万円以下であれば贈与税がかかりません。基礎控除が110万円の贈与を暦年贈与といい、基礎控除110万円以下なら贈与税がかからないと言う制度を利用するために、多くの方が相続税の節税対策として利用しています。 例えば、子供3人に毎年110万円を10年間贈与したケースでは相続財産が合計で3,300万円減少することとなります。
生前贈与が認められない!? 生前贈与はここに注意!
将来的に改正されるかもしれませんが、ここで現行法の下での節税対策として行う生前贈与について知っておきたいことを2点確認します。
1.せっかく贈与した財産であっても贈与した人(あげた人)が死亡した場合には、死亡日前3年以内に贈与した財産は相続財産に加算して相続税を計算しなければならない場合があるということです。加算しなければならない財産とは、死亡した人から相続等により財産を取得した人が3年以内に贈与を受けた(もらった)財産です。
したがって、相続等により財産を取得しないお孫さんなどは加算の必要がありません。 また、お孫さんへの生前贈与は、お子さんへの相続を飛ばして直接財産が移転するので相続税の課税を1回免れる効果もあります。
2.相続税の調査において生前にした贈与が贈与と認められない場合があることです。お孫さん名義の預金に毎年110万円を振り込んで贈与をしていたケースで、その振込先の預金の実質の所有者は振り込んだ人であると認定されることがあります。
そこで、相続税の調査で贈与が否認されることのないよう、①贈与を受けた人は預金通帳や印鑑の管理は自ら行うこと、②贈与契約書を作成すること、③また、基礎控除を超える贈与をして贈与税の申告と納税を行うことなども一つの方法といえます。
税理士法人 ふどう舎
税理士 瀧澤 豪